ドーナツ状に分布する電荷
電子では、電子スピンによって、棒磁石のような磁気モーメント(簡単に言えば、磁気)が形成されています。永久磁石の磁気の大半は、永久磁石に含まれる電子の電子スピンによるものであって、電子が原子の電子軌道上に存在することによる寄与はほとんどないと考えられています。
電磁気学によれば、磁気は電流(電荷の流れ)によって生成されます。電磁気学の法則が電子内部にも適用可能であるならば、電子内部に電荷の流れが存在するはずです。一方、電子に光を衝突させる実験によって、電子内部に硬いものが存在する可能性は極めて低いことも分かっています。
電子内部に電荷の流れがあって、かつ、硬いものがないとするならば、電荷が雲のように分布していると考えたらよいのではないでしょうか。なお、電子軌道でも電子が雲のように分布していると表現されることがありますが、これは電子軌道上で電子がどのように存在しているか、という話です。これに対して、ここでは、電子内部でも電荷が雲のように存在しているのではないか、という話です。

円形電流が生成する磁気モーメント
電子内部で電荷がドーナツのような形に分布していて、ドーナツの穴の周囲を円形状にぐるぐると流れているとした場合、ビオ・サバールの法則によって生成される磁気モーメントが計算できます。電荷が雲のように分布しているとしても、磁気モーメントを計算する上では、電荷が一点に集中していると考えることができます。
円形電流が生成する磁気モーメントは、次の式で得られます。
$ m = I \cdot S = I \cdot \pi r^2 $
ここで、$m$ は磁気モーメント、$I$ は電流、$S$ は電流の囲む面積、$\pi$ は円周率、$r$ は半径を表しています。

ここで、電荷の平均速度を便宜的に光速度であるとします。磁気モーメントは速度と半径の積によって決まるので、ある磁気モーメントに対しては、速度が速ければ半径は小さく、速度が遅ければ半径は大きい、という関係になります。
電流は、電子の電荷(電気素量、$e$ )が、円周 $2\pi r$ の長さを光速で回る回数分になるので、
$ I = e \cdot \dfrac{c}{2 \pi r} \ \ [\ C/s\ ] $
ここで、$e$ は電気素量、$-1.602176634 \times 10^{-19} \ \ [\ C\ ] $、$c$ は光速、$2.99792458 \times 10^8 \ \ [\ m/s\ ]$ です。このときの磁気モーメントを $m_i$ と置くと、
$ m_i = I \cdot S = e \cdot \dfrac{c}{2 \pi r} \cdot \pi r^2 = \dfrac{1}{2} ecr \ \ [\ Cm^2/s\ ] = [\ J/T\ ]$
一方、電子の磁気モーメント $m_e$ の値は、理論値と観測値がほぼ一致していて、次の値となっています。
$ \mu_B = 9.27400994 \times 10^{-24} \ \ [\ J/T\ ]$
$ \mu_B = m_i $ とし、このときの半径を $ r_m $ とすると、
$ r_m = \dfrac{2\mu_B}{ec} = 3.861592622 \times 10^{-13} \ \ [\ m\ ] $
この半径、$ r_m $ を「磁気モーメントから求めた電子半径」と呼んでおきます。磁気モーメントの観測値から、電子の半径を求めることができました。